私はおよそ半世紀前に初めてドイツ語という言語に接した。
それは足早に、逃げるように過ぎ去る北欧の秋の早朝に霧に包まれて響いていた。
Guten Morgen
しっとりとして冷たい雲にすっぽりと包まれた濃い灰銀色の朝の空気の中に重く軽くじんわりと響き沈んでいった、そして私の北欧の生活が動き始めた。
その昔私のドイツ語の手引きをしたモニカに会いに、、、。
小川、せせらぎ 川 河 そして海、これ程魅了されるものがあるだろうか。 様々な野生動物の住みか森を林を草原を古い石畳の溜息が籠っている古都を、嫉妬、幸せ、妬み、幻影、幻滅、幸運の渦巻く都会を、ひなびた町を、殺伐とした工場地帯を、うら寂しい片田舎を、老若男女の散歩道を、子供達の歓声が風にこだまする公園を、ささやかなる願い事で一杯の平凡な小市民の町々をそして中世の騎士の如く真夜中に疾走する車を、そんなもの全てが、うねり、くねり、反転し、逆流し屈折しいつしか海に流れ込み、ことごとく抱擁し受け入れ飲み込む大海に果てる、えたいの知れない自然の力と威厳と底知れない恐怖と戦慄を抱かせる海に、自然と生きとし生けるもののドラマと共に河はその源に帰る。地球の歴史と共に流れ続けた、そして流れる、倦まず弛まず流れ、流れ続ける川、河そして海、仮面の後ろの絵巻物、豪華絢爛な錦絵を繰り広げ流れ続ける。
河の流れは自然の意志であり、落差などでは決してないと私は信じている、、、そう私には感じられる。